金研設立40周年記念対談
中央銀行におけるリサーチ

第2回 金融政策運営における「アートとサイエンス」

ウォルシュ教授、オルファニデス教授、若田部副総裁による対談の第2回は、金融政策運営における「アートとサイエンス」の議論から始まります。長年にわたって論じられてきた重要なテーマです。

つづいて、データに関する様々な論点が取り上げられました。中央銀行はどのようなデータを収集すべきか、データをどう活用するべきか、データ利用上どのような留意点があるかという議論です。

不確実性のもとでは「サイエンスとジャッジメント」が重要となる

若田部(日本銀行副総裁) これまで、金融政策運営の複雑性や不確実性について意見を交わしてきました。政策当局者と学界の研究者による豊かで実りある対話が持てたと思います。

これらの議論は、昔からあるものの未だに続いている問題、すなわち金融政策運営における「アートとサイエンス」問題を自然と思い起こさせます。この問題については、どのようなお考えをお持ちでしょうか?

ウォルシュ教授の『金融理論と政策(Monetary Theory and Policy)』は、金融政策のサイエンスに関するもっとも有名な教科書の一つとなっている。

ウォルシュ(カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校特別名誉教授) 私は『金融理論と政策(Monetary Theory and Policy)』という教科書を書きましたが、この本はまさに、金融政策のサイエンスに関するものです[8]。 この本で私が取り扱ったのは、金融政策が経済活動やインフレに政策効果を与える経路や、マクロ経済を撹乱させる原因、政策当局者がどのようなトレードオフに直面し、相反する政策目標をどう重みづけて判断するかといったことが「すべてわかった状態において」、セントラルバンカーがどのように金融政策を立案・実行すべきか、という問題です。

しかし、最近の歴史を振り返ってみると、バーナンキ、イエレン、パウエルといったFedの歴代議長は、それぞれ、世界金融危機、自然利子率や自然失業率に関する不確実性、新型コロナウイルス感染症という不確実性に直面してきました。金融政策のアート、すなわち、サイエンスがもたらす知見をこのような新しい状況にどう適用するか、その方法を見出すことは、よい結果を達成するためには決定的に重要です。

2001年には「金融政策のサイエンス(とアート)」(The Science (and Art) of Monetary Policy)という論考を、サンフランシスコ連銀に寄稿しました[9]。その中で私は、アタナシオスが前の議論で指摘したことと同じ話を論じています。それは、世の中は不確実性に満ち溢れていて、世界は不完全にしか理解されていない、ということです。だからこそ、よい理論モデルやよいサイエンスが必要になるだけでなく、よいジャッジメントも必要となります。とくに、金融政策を遂行する上では、ジャッジメントは不可欠な役割を果たすのです。

金融政策運営は確固とした科学的根拠に基づいていなければなりませんが、料理本のレシピに従って手順通りに実務を進めていけばよいというものでもありません。なぜならば、現実には常にいろいろな新しい事態、例えば金融危機や新型コロナウイルス感染症、ウクライナでの戦争やエネルギー市場の混乱といった事態が発生するためです。

こうした事態がどういう意味を持つのか、発生時点ではわからないものです。そのような状況で、何をすべきかをずばり教えてくれるようなモデルは存在しません。このようなときに、健全なジャッジメントをできる健全な人々が必要となるのです。

オルファニデス (MIT スローン スクール オブ マネジメント 教授) カールはアートのことから話を始めて、ジャッジメントのことに話が至りました。これはとても大事なことです。私は「アートとサイエンス」について聞かれた場合、「正直、アートの意味するところがジャッジメントでないとしたら、アートの話をする意味が分からない。なぜなら、それ以外のアートの意味だと、よい政策とは全く関係がないので」と答えるようにしています。

よい公共政策は、常にしっかりとした分析的根拠と計測に基づかなければならないというのが私の基本的な立場です。これ以外の考え方はないですし、サイエンスというものが結局のところ何であるかを実際に指し示すものだと考えています。

一方で、ジャッジメントが必要となるのは、明確なガイダンスを示すために必要なデータや情報が十分に存在していない状況です。そのような状況下では、政策当局者は、利用可能な細切れの情報と政策当局者自身が持つ知識・経験を組み合わせることで、よい結論を導き出す必要があります。

カールが指摘したように、私たちは、私たちを取り巻く経済や人間行動というものを完全に解明することはできません。これは、経済システムがどう振舞うかを決めるのは人間の振る舞いであり、そうした人間行動を十分に正確に理解することは不可能だからです。これは、物理学者などと比べて公共政策に関わる者が直面する極めて大きな困難です。

このため、私たちが使う理論モデルがどれだけ優れているかに関係なく、どうしても消すことのできない不確実性があるということを認識しなければなりません。不確実性があるために、物事を正確に計測することも不可能です。だからこそ、ジャッジメントが重要になるのです。私は、アートとジャッジメントをこのように理解しています。

ところで、"art"という単語が日本語でどう訳されるのかが気になりますね。言語は必ずしも一対一には対応しないので、いま議論したジャッジメントの意味に近い形で正確な概念を捉えた日本語訳となっていればよいのですが。

若田部 日本語では、アートとジャッジメントには別々の単語が充てられているので、翻訳は大丈夫ですよ。

アートという単語は、通常、美術(fine arts)というような意味合いを持ちます。また、技巧(technique)という意味合いを持つこともあります。一方で、ジャッジメントというのは、何らかの根拠をもった分析ということであり、技巧以上の含意をもつものということが言えるかと思います。

アタナシオス・オルファニデス
MIT スローン スクール オブ マネジメント 教授

オルファニデス 不確実性があるがゆえにジャッジメントが必要になるという話をしましたが、カールが昔の研究でうまくモデル化したように、ジャッジメントそのものをモデル化することもできます [10]

この分野の一部の研究では、競合する経済モデルが複数あって、どのモデルが一番現実に妥当するかわからないという状況を想定します[11]。 そうした設定のもとで、政策当局者に対して「あなたが持っている事前情報(priors)を活用して、それぞれのモデルが示す異なった結果に対して評価の重みづけを行ってみてください」と問いかけたとしましょう。この評価の重みづけこそが、いまの議論で我々がジャッジメントと呼んでいるものです。

ウォルシュ これまでの研究で、どのような政策が頑健なのかや、政策の頑健性をどう評価するかについての科学的知見が色々と得られてきましたが、これもそのよい例ですね。しかし、こうしたジャッジメントを行うことは、究極的には異なるモデルの妥当性(それが正しいモデルである確率)を評価していく問題に帰着しますし、そのような評価は極めて困難なものです。

サイエンスは政策当局者が意思決定をするにあたって様々な政策オプションを系統立てて整理し検討することを助けるものではありますが、答えそのものを与えてくれるものではない、とまとめることが出来ます。

オルファニデス 少し昔の話になりますが、最適政策を導き出すことがいかに難しいかカールが議論していました。私は、何なら「最適」という言葉を使うことすら避けたいと思うほどです。政策運営という観点では、それなりに自信が持てる政策を得られたのであれば、もうそれで十分素晴らしいことなのです。私ならこの段階で事足りると考え、最適な政策を目指そうとなお努力を続けることはしないでしょう。

この話は、頑健な政策とはどういうものなのかを理解することにもつながってきます。リスク管理の観点からは、(不確実性がある未来に対応できるよう)全体評価において頑健な政策というものを見極めねばなりませんが、その際に必要になるのがジャッジメントだと言えます。

若田部 これまでの議論を踏まえると、アートとサイエンスという対比よりは、サイエンスとテクノロジーという対比のほうが適切だと思いました。つまり、サイエンスと、現実世界にサイエンスを適用する際に必要になってくる実務的な技術としてのテクノロジーを対比することがより有益そうです。

技術者は、現実世界の多様な状況でもしっかりと動作するものを作るために、様々な不確実性を考える必要があります。このことは、中央銀行で政策運営に携わる人々にとっても同じだと言えるでしょう。中央銀行エコノミストは、良きエンジニアであることが求められます。

<次ページ:データの作成者および利用者としての中央銀行>

データの作成者および利用者としての中央銀行

若田部 それでは、次にデータについて議論しましょう。政策運営においても政策リサーチにおいても、その基礎はデータにあると言えます。そこでまず、中央銀行はどのようなデータに注目し、収集をしていくべきかについて、考えをお聞かせください。

オルファニデス その点については、本当に色々と考えていることがあります。ですが、まず中央銀行がその草創期から取り組んできたことを歴史的に振り返ってみましょう。

良質なデータはしばしば中央銀行によって作り出されましたし、ほかの機関に先駆けて、中央銀行が新たなコンセプトを発展させ、それを計測してきました。どうしてでしょうか?それは、エビデンスに基づいた政策以外の道はなく、そのためにはしっかりとしたデータが前提となるという認識が中央銀行内部にあったからです。

米国を例にとってみましょう。一国全体を対象とする物価指数は、金融政策を行ううえで不可欠なものです。しかし、Fedが設立された1913年当初は、米国全体をカバーする物価指数は存在しませんでした。そのため、物価指数のほか鉱工業生産指数といった有用な統計の作成を始めたのは実はFedだったのです。物価指数の作成事務が商務省に移管されたのはその後のことでした。

キプロス中央銀行本店。キプロス中銀は、ユーロシステムを構成する中央銀行の一つで、オルファニデス教授は2007年から2012年まで総裁を務めた。

別の例は、ユーロ圏の創設です。ユーロ圏は、いわば抽象的で概念的な存在なので、ユーロ圏全体に関する統計データというものは、当然ながら当初は存在しませんでした。そのため、欧州中央銀行(European Central Bank: ECB)の設立初期や、その前身である欧州通貨機構(European Monetary Institute)では、ユーロ圏の政策運営に資するデータを構築するために多大な努力が捧げられてきました。

最後の例は、物価連動債です。物価連動債からは市場参加者が形成するインフレ予想の情報を抽出できるため、中央銀行にとって非常に強力かつ極めて有用な金融商品です[12]。しかし、場合によっては、新しく物価連動国債市場を作り出す必要があるでしょう。その国の財務省に対して、「このような金融商品の市場が発展すると、非常に有用なデータを得ることが出来ます」と働きかけていくことが必要になるかもしれません。

これらの例が示しているように、中央銀行にとっては有用なデータは多く存在しています。

若田部 ありがとうございます。ではカール、どうでしょうか?

ウォルシュ 政策当局者が直面する不確実性の一つとして、いま現在の経済の状況があげられます。理論モデルでは、経済主体は現時点での経済の状態が分かっているという仮定のもとで、今後どこに向かうべきかという問題を解明しようとしています。しかし実際には、政策当局者は自分がどのような経済状態に立っているのか、いかなる時においても正確には把握してはいません。

このため、より詳細なデータを高頻度で収集することができれば、政策意思決定にとって非常に有益なインプットになると考えています。ニューヨーク連銀が公表している週次経済活動指数は、その好例でしょう[13]

オルファニデス もう一点、付け加えるとすると、サーベイデータも広義のデータに含められます。サーベイデータは世界各国でもっと取り組みを進めていくべき重要な領域だと考えています。

金融政策においてもっとも重要な論点の一つとして、人々の予想の計測、なかでもインフレ予想の計測があります。しかし、インフレ予想の計測は信じられないほど困難な作業です。なぜなら、インフレ予想は、どの経済主体の予想なのか、例えば家計の予想なのか企業の予想なのかによっても異なりますし、そのほかの様々な要因、例えば、どの消費バスケットを対象としているかや、どのような情報セットを経済主体が持っているかによっても変わってくるためです。

このため、より多くの、より高品質なサーベイデータが利用可能になることで、政策遂行プロセスにおいてより有意義で有益な情報が収集できるようになるでしょう。

世界を見渡してみると、この分野では過去20~30年で大きな進展がみられ、年を追うごとに、より多くのインフレ予想に関するサーベイデータが利用可能になってきています[14]。しかし、私はまだまだ十分ではないと考えています。インフレ予想を理解することの重要性に鑑みると、より多くの資源を投入してインフレ予想に関するデータ収集を進めることは、各国の中央銀行に強く促したいと考えていることの一つです。

カール・E・ウォルシュ
カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校 特別名誉教授

ウォルシュ 政策運営の観点では、他にも、経済主体による(消費や設備投資の)異時点間の代替行動に金融政策がどのような影響を与えるか、という重要な論点があります。つまり、例えば、金利動向が家計や企業の行動に対してどう影響を及ぼしているかという点に強い関心を持っています。

この点を分析していくためにはパネルデータが必要になります。こうしたデータセットもどんどん増えており、個々の経済主体の行動を追跡する分析が行いやすくなっています。データがより豊富になるほど様々な重要な問題に取り組む際のデータの有用性も高まっていきます。

予想に関するデータについてですが、サーベイデータは回答者の平均的な予想値以上の情報を持っています。予想のばらつきや偏りといった高次モーメントの情報を含む様々なことをサーベイデータから知ることができます。

例えば、インフレ予想のアンカーが外れ始めたときには、まず予想分布の偏りにその徴候が現れるという複数の指摘があります。人々のインフレ予想が本当にアンカーされているかをより的確に議論するために様々な活用方法を提供しうるため、こうした情報は全て非常に有益です。

<次ページ:データは多ければ多いほどよいのか?>

データは多ければ多いほどよいのか?

若田部 人々の予想に関するサーベイデータの重要性について私も全面的に同意します。

若田部昌澄
日本銀行 副総裁

さて、サーベイデータ以外でも高粒度データの普及や計算能力の向上を目の当たりにしています。エビデンスに基づいた金融政策運営を目指していくこともかなりの程度できるようになってきているのかもしれません。この点についてはどのようにお考えでしょうか?

ウォルシュ データは多ければ多いほどよい、という主張には誰しも賛成するでしょう。私はむしろ、どういったデータが役立つ知識をもたらしうるのかということが本当の問題なのだと考えています。データからは、無数のミクロ経済学的な事実を明らかにすることが出来ますが、そのうちどのようなものが有益でしょうか。

これまでの話の通り、経済主体の予想は極めて重要なものです。このため、個別の家計や企業の予想データを集めることは非常に重要です。同様に、企業の見方が家計の見方とどう違うかといった点を理解することも有益です。

しかし、マクロ経済の動向を考えるうえでカギとなるのは、誰の予想が重要なのかということです。究極的には、中央銀行の目標はマクロ集計量で定義されます。それゆえ、マクロ集計レベルでの目的達成にデータがいかに役に立つかを考える必要があります。

世の中には多数の豊富で有用なデータセットが存在しており、応用ミクロ経済学者はそのようなデータを使って、「擬似的にコントロールされた実験」から様々な分析結果を得ています。もっとも、こうした結果がマクロ経済を考えるうえでどの程度有用なのかは、ミクロ経済学の領域ほど明確ではありません。実際、個々の経済主体レベルでの行動の違いが意味するところをマクロ経済への含意に変換することは困難な課題です。

例えば、労働者が賃金の変化にどう反応するか、専門用語でいえば労働供給の賃金弾力性は、あらゆるマクロ経済学モデルにおいて非常に重要なパラメータです。もちろん、労働経済学者による労働供給関数の推計結果は大量にあります。もっとも、これは理由があってのことですが、こうした推計はコントロールされた実験、すなわち、ある一つの集団だけが影響を受けて他の人々は影響を受けないという状況に着目して推計が行われています。例を挙げると、タクシー運転手の行動がタクシー料金の変化にどう反応するかといった分析を行っているわけです。

金研では毎年、英文機関誌『Monetary and Economic Studies (MES) 』を発行している。MESには、金研スタッフや客員研究員による研究成果や、国際コンファランスでの講演論文などが掲載されている。 (MES掲載論文一覧へ)

しかしながら、金融政策を考えるうえで関係するのは、マクロレベルの賃金弾力性です。このため、応用ミクロ経済学による実証研究結果をどのようにマクロ集計量に対応させていくのかというとても厄介な問題を考える必要があります。

残念ながら、ミクロからマクロへの集計は非常に難しい問題です。このため、私たちマクロ経済学者は、個々の家計に関するモデルを書き下したうえで、なぜか同じ関係がマクロの集計レベルでも成り立つと単純に仮定するということが往々にしてあります。しかし、この仮定をサポートする理論はほとんどありません。それゆえ、この仮定は極めて強い仮定なのです。

このような事情から、情報が豊富な個票データをもとに現在の経済の状態や物価動向についての指標を作成するといったことのほうが、より政策運営に役立つのではないかと考えています。

オルファニデス 別の論点として、データを収集するのはとてもコストがかかるということを意識する必要があります。ただやみくもにデータ収集に経営資源を投じては駄目で、データ収集にかかる費用便益分析を行っていく必要があると考えます。

もっとも、技術進歩によって、様々な領域でデータ収集コストが下がってきているのも事実です。その結果、価格データの収集といった面で改善がみられています。例えば、日次で物価動向を計測できるようになる日もそう遠くはないだろうと考えています。

ウォルシュ 計測に関連した話でもう一つ注意しなければならないことがあります。それは、より高頻度でデータをサンプリングすると、シグナル(有用な情報)対比で、ノイズ(調べたい現象に対して無用な情報、あるいは計測誤差)が大きくなってしまう可能性があることです。言い換えると、より多くのデータが利用できるのはよいことなのですが、政策当局者にとって有用な知識を得るためにはデータの利用法について慎重に考えなければなりません。

オルファニデス その通りですね。データは不完全であるということに私たちは意識的になる必要があります。物価の例でも、指数理論や品質調整といった論点があります。データの計測誤差についても考慮しなければいけません。どうしても消し去ることのできない計測誤差というのは今後も残り続けます。しかし、より多くのデータを収集できるようになってきていますし、この点でも改善を進めていくことができるでしょう。

若田部 様々な素晴らしいご提言をありがとうございます。今回の議論を通して、よりよい政策運営のために、理論とデータ、そしてジャッジメントをどう活用するかについて多くの洞察を得ることができました。

<第3回「コミュニケーションにおいて中央銀行リサーチが果たす役割」に続く>

Notes

  • この教科書の初版は1998年に出版され、2017年には最新の第4版が発行されている。大学院レベルの金融論の標準的な教科書の一つとなっている。
    Walsh, Carl E. (2017) Monetary Theory and Policy , fourth edition, MIT Press. [8]
  • Walsh, Carl E. (2001) "The Science (and Art) of Monetary Policy," FRBSF Economic Letter, Federal Reserve Bank of San Francisco. [9]
  • Walsh, Carl E. (2015) "Goals and Rules in Central Bank Design," International Journal of Central Banking, 11(supplement 1), 295-352. [10]
  • 例えば、次の論文を参照。Levin, Andrew T., Volker Wieland, and John Williams (1999) "Robustness of Simple Monetary Policy Rules under Model Uncertainty" in John B. Taylor (ed.), Monetary Policy Rules, 263-318, University of Chicago Press. [11]
  • 実際に、中央銀行エコノミストによる、物価連動債のデータから市場におけるインフレ予想の抽出を試みた研究が多く存在する。例えば、米国を対象とした研究については、例えば、D'Amico, Kim, and Wei (2018) を、日本を対象とした研究については平木・平田 (2020) を参照。
    D'Amico, Stefania, Don H. Kim, and Min Wei (2018) "Tips from TIPS: The Informational Content of Treasury Inflation-Protected Security Prices," Journal of Financial and Quantitative Analysis, 53(1), 395-436.
    平木一浩・平田渉 (2020) 「ブレークイーブン・インフレ率から抽出される日本の市場参加者の長期インフレ予想」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No. 20-J-6. [12]
  • ニューヨーク連銀の週次経済活動指数(Weekly Economic Index: WEI)の詳細についてはリンク先のページを参照https://www.newyorkfed.org/research/policy/weekly-economic-index#/ [13]
  • インフレ予想のサーベイデータに関する最近の研究動向をまとめた論文としては、以下のWeber et al. (2022)を参照。日本のインフレ予想に関するデータや関連研究については、以下の安達・平木 (2021)を参照。
    Weber, Michael, Francesco D'Acunto, Yuriy Gorodnichenk and Olivier Coibion (2022) "The Subjective Inflation Expectations of Households and Firms: Measurement, Determinants, and Implications," Journal of Economic Perspectives, 36(3), 157-184.
    安達孔・平木一浩 (2021) 「インフレ予想の計測手法の展開:市場ベースのインフレ予想とインフレ予想の期間構造を中心に」、日銀リサーチラボ、No.21-J-1. [14]

カール・E・ウォルシュ
カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校特別名誉教授。1976年カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了。Ph.D.(経済学)。サンフランシスコ連邦準備銀行シニアエコノミストなどを経て、1991年カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校教授、2010年同特別教授、2020年より現職。2019年~22年に日本銀行金融研究所海外顧問。ご専門は金融論・中央銀行論など。主な著書にMonetary Theory and Policy (Fourth edition, MIT Press, 2017)。


アタナシオス・オルファニデス
マサチューセッツ工科大学(MIT) スローン スクール オブ マネジメント教授。1990年MIT博士課程修了。Ph.D.(経済学)。米国連邦準備制度エコノミスト、同シニアアドバイザーを経て、2007年キプロス中央銀行総裁に就任。欧州中央銀行政策理事会メンバー 、欧州システミックリスク理事会運営委員を兼任した。2018年より日本銀行金融研究所海外顧問。ご専門は、中央銀行論、ファイナンス、政治経済学。


若田部昌澄
日本銀行副総裁。1990年早稲田大学大学院修士課程修了、1994年トロント大学経済学大学院修士課程修了。早稲田大学政治経済学部専任講師などを経て、2005年同政治経済学術院教授、2017年コロンビア大学経営大学院日本経済経営研究所客員研究員、2018年3月より現職。経済思想史が専門で、大恐慌をはじめとする経済危機に関する論文・著書多数。


  • 本対談は、2022年11月中旬に開催しました。文中の肩書は対談時点のものです。
  • 本ニュースレター中で示された意見・見解は登壇者のものであり、登壇者が現在所属している、または過去に所属していた組織の公式見解を示すものでは必ずしもありません。
  • " Cyprus central bank Nicosia Republic of Cyprus.jpg ” (2ページ目掲載のキプロス中央銀行本店の写真)は、TourinNicosia によるもので、CC BY-SA 3.0 ライセンスのもと配布されています。