カヘイハクでまなぶ #おうちで職場体験 貨幣博物館のおしごと

PDFはこちら(972KB pdf)

No.3 資料を永く残すために(展示室編②)

Currency Museum, Bank of Japan 2021.4

皆さんは展示室に入って「暗いなぁ」と感じたことはありませんか?これは、展示している資料を光から守っているためです。前回、博物館で資料を永く残すために「温湿度の変化」や「虫やカビの侵入・発生」に気をつけることをお話ししました。今回は、展示室で資料を照らす「光」や資料を傷める恐れのある有害なガスを含んだ「空気」から、資料を守る裏側の仕事をご紹介します。

「暗い展示室」=資料に優しい空間

紫外線を含む太陽光は、浴び続けると私たちの肌にとってよくありません。資料も紫外線などの強い光に長くあたると錦絵の色が変わったり、紙や布の繊維が壊れたりしてしまいます。

展示室では、太陽の紫外線が直接入らないように注意し、紫外線を出さない美術館・博物館専用の照明を使います。また、傷みやすい絵画資料などは、光の強さを測り、資料に適した照明の明るさに調整します。そして、長期間、光があたり続けないように一定の期間で展示替えを行います。「暗い展示室」は「資料に適した明るさの展示室」であり、資料を守るためのとても大切な空間なのです。

展示ケース内の明るさ調整スイッチの写真
光の強さを測って、照明の明るさを調整

つよ~い臭い、資料にキケン!

皆さんが何気なく嗅いでいる臭いが、実は資料を傷める物質となることがあります。例えば、温泉地でシルバーのアクセサリーが黒くなってしまったことはありませんか?これは、温泉の臭いの元である硫黄が銀の表面につき、「腐食(ふしょく)」(錆(さび)など)という化学反応を引き起こし、銀を変色させたのです。

錆びやすい金属の資料を多く所蔵する貨幣博物館では、空気環境には特に注意しています。例えば、酸っぱい臭いがする「酢酸」などの有機酸、プールの消毒の臭い「塩素」、独特の刺激臭「アンモニア」、いずれも資料に悪い影響を与えることで有名なガスです。これらの有害ガスは、鼻で感じない僅かな量でも、金属の表面に触れると錆ができ、色や形を変えてしまう恐れがあります。特に密閉された展示ケース内では、僅かなガスでも資料を傷めるリスクが高いため、試験薬や機器などで空気環境を調べます。また、ケース内には金属板を置き、色の変化を見てガスの影響を確認しています。有害ガスが確認された際は換気をしてきれいな空気に入れ替えたり、有害ガスを除去する吸着剤を置いたり、きめ細やかに対応し、資料を傷めない空気環境を作っています。

酸・アンモニアを調べる試験薬と空気を吸って試験薬で調べる機器の写真
ケース内に有害ガスがないか機器などで調査中!
設置された銀銅鉛などの金属板の写真
資料と同じ空間に金属板を置いてチェック!

#おうちで職場体験

No.1 博物館ってどんなところ?
No.2 資料を永く残すために(展示室編①)
No.4 資料を永く残すために(収蔵庫編)