バリュー・アット・リスク(以下、VaR)は、金融機関のリスク管理における、標準的なリスク指標である。VaRの算出には、リスク・ファクターの収益率分布に正規性を仮定することが多いが、分布の裾の厚さを捉えることは難しい。このため、近年では、経験分布を用いることで、収益率分布の裾の厚さを表現できる、ヒストリカル法に注目が集まっている。ただし、ヒストリカル法には、リスク・ファクターの直近の変動を捉えにくいという問題点が存在する。そこで、リスク・ファクターの直近の変動をよりうまく表現するための、改良手法がいくつか提案されている。
本稿では、ヒストリカル法およびいくつかの改良手法を解説するとともに、数値分析を通じて各手法の比較を行い、リスク管理実務において望ましいVaR算出手法を検討する。
キーワード:VaR算出手法、ヒストリカル法、標本分位点、Harrell-Davis推定量、GARCHモデル
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。