日本銀行と日本橋

永代橋から日本橋へ

日本銀行は、1882(明治15)年10月10日、永代橋際(現在の日本橋箱崎町)の旧北海道開拓使(1869<明治2>年7月設置~1882年2月廃止)物産売捌所の建物を本店として開業しました。永代橋の本店は、既存の建物を借用したもので、本店建物としては手狭で、官庁や商業・金融の中心地からも離れていました。このため、開業の翌年、「東京の中央部に店舗を新築すること」を決定し、候補地の検討を開始しました。

日本銀行が本店新築にあたり選んだ場所「東京の中央部」は、現在の本店がある日本橋本石町(当時の日本橋区本町・本両替町)でした。五街道の起点で、交通・商業の中心地であった日本橋には、当時、駿河町の三井銀行、兜町の第一国立銀行をはじめ、多くの金融機関が集まっていました。また、常磐橋を渡ると印刷局をはじめとする官庁街が広がっていました。

日本銀行の新たな本店は、東京駅などの作品で有名な辰野金吾によって設計され、1890(明治23)年に着工し、1896(明治29)年3月に落成して、同年4月に永代橋際の店舗から移転しました。

新本店の敷地取得 (163KB pdf)

日本銀行新築場沿革図

金融研究所アーカイブが所蔵する『日本銀行新築場沿革図』の17枚の写真をご紹介します。現在残されている原資料は、焼き付け写真が巻物に貼付された軸物の形態です。写真の上部に撮影年月日が手書きで記され、1890(明治23)年9月の着工から落成直前の1896年1月までの約6年半、大凡半年毎に12回撮影されています。

建物を上から俯瞰した写真が多く、撮影のために大きな櫓が組まれたものと考えられます。またほとんどの写真が2枚の写真を合成したものとなっています。

工期後半の写真には職人のほか、背広に山高帽を被った人や、羽織袴姿の人がカメラの方向を向いて並んで写っているものが見られます。日本銀行本館の建築が日本人建築家による最初の国家的建築であったこともあり、このような記録写真が残されたと考えられます。写真からは本館の建築過程が明らかになるだけでなく、周囲の日本橋の土蔵造りの街並みも撮影されており、様々な観点から貴重な記録といえます。

竣工当時の建物配置図(84KB pdf)

日本銀行新築場沿革図 画像一覧

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