金融研究 第26巻別冊第2号 (2007年11月発行)

追加融資を考慮した信用リスク:構造モデルによるELとULの解析解

山下智志、吉羽要直

 本稿では、追加融資が行われうる場合の信用リスクを考察する。具体的には、マートン型構造モデルにおいて、期待損失(expected loss: EL)を最小化するような追加融資行動を想定し、貸出量の変動がデフォルト確率、デフォルト時損失、金利収入の変化を通じて、ELや非期待損失(unexpected loss: UL)に及ぼす影響を解析的に把握する。さらに、融資初期時点におけるELとULが、2次元正規分布を用いて解析的に評価でき、数値解が容易に計算可能なことを示す。また、この結果を用いて、ELの最小化(金利収入とデフォルト時損失から構成される期待収益の最大化)がULの拡大を招くことを定量的に評価する。

キーワード:デフォルト確率、デフォルト時損失率、デフォルト時エクスポージャー、期待損失、非期待損失、ストレス時期待損失


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