金融研究 第40巻第1号 (2021年2月発行)

HANK研究の潮流:金融政策の波及メカニズムにおける経済主体間の異質性の意義

岩崎雄斗、須藤直、中島誠、中村史一

近年、金融政策の分析では、いわゆる「Heterogeneous Agent New Keynesian〈HANK〉モデル」を用いたアプローチが急速に広がっている。家計部門を1つの代表的個人として擬制する主流モデル(「Representative Agent New Keynesian〈RANK〉モデル」)と比べると、HANKモデルは、家計間の属性の違いを明示的に描写する点に特徴があり、属性の違いに帰する経済行動の特性やマクロ経済への含意を分析することができる。こうしたHANKモデルへの関心の高まりは、コンピューターの計算能力向上によって高度なシミュレーション分析が可能になったことや、マイクロデータを活用した実証分析によって個々の家計の振舞いについての知見が深まったことなどを踏まえた、RANKモデル再考の動きと位置付けることもできる。本稿では、「不完備市場」、「借入制約」、「限界消費性向」などHANKモデルにおいて重要な役割を果たす概念を説明したうえで、金融政策の波及メカニズムへの含意について整理する。

キーワード:金融政策、不完備市場、借入制約、限界消費性向


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