金融研究 第37巻第2号 (2018年4月発行)

債務契約における会計情報の役割(2):会計情報の事後的役割

首藤昭信、伊藤広大、二重作直毅、本馬朝子

本研究の目的は、(1)債務契約と会計情報の関係に関する欧米の実証研究を広範にサーベイすることにより、先行研究の発見事項の体系化と論点整理を行い、(2)わが国の債務契約に関する研究機会を提示することである。本研究は3本の論文から構成されている。本稿は首藤ほか[2018a]に続き、(1)のうち、債務契約における会計情報の事後的役割(契約支援機能)の観点からサーベイを行う。サーベイの結果、会計情報は、債務契約の締結後において、財務制限条項での利用等を通じて、経営者のモラル・ハザードを抑制する役割を果たしていることを確認した。また、効率的な財務制限条項を設定するためには、保守的な会計手続きが望ましく、公正価値会計がその経済的意義を損なう可能性があることもわかった。また不完備契約理論を用いて、財務制限条項の意義に関する新しい側面に関する検討を行った。

キーワード:債務契約、会計情報の事後的役割、財務制限条項、会計情報の質、コーポレート・ガバナンス、IFRS、不完備契約理論


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