ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2017-J-17

債務契約における会計情報の役割:先行研究のサーベイとわが国の研究課題

首藤昭信、伊藤広大、二重作直毅、本馬朝子

本稿の目的は、債務契約と会計情報の関係に関する欧米の実証研究を広範にサーベイすることにより、(1)既存研究の発見事項の体系化と論点整理を行い、(2)日本の債務契約に関する研究機会を提示することである。サーベイの結果、会計情報は、契約当事者間の情報の非対称性を緩和し、資金調達源や利率といった契約条件の決定において重要な役割を果たしていることを明らかにした。また契約締結後においても、財務制限条項での利用等を通じて、経営者のモラル・ハザードを抑制する役割を果たしていることを確認した。これらの結果は、債務契約の事前と事後において、会計情報が債務契約の効率性を高めていることを示唆する。さらにそのような発見事項に依拠しつつ、メインバンクといった日本の債務契約の特徴を勘案して、わが国の会計学研究が検討すべき研究課題を提示した。

キーワード:債務契約、会計情報の事前的役割、会計情報の事後的役割、会計情報の質、IFRS、メインバンク、財務制限条項


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