金融研究 第36巻第2号 (2017年4月発行)

金融規制の複合的影響を考慮したXVA

斎藤祐一

デリバティブの評価では、信用評価調整に加え、デリバティブ取引に必要な資金調達コストを評価調整することが市場慣行になりつつある。金融危機以降の資本規制強化や証拠金規制の導入により、金融機関は、規制資本に係るコストのほか、証拠金の調達コストも見積もる必要が生じている。
本稿では、新たに導入される金融規制を踏まえ、デリバティブの各種評価調整を定量的に評価する。各種評価調整の水準は、格付、担保契約、ファンディング・スプレッド等に応じて、大きく異なる。金融機関が、取引内容に見合うコストを各種評価調整を用いて日々管理することにより、担保や資本等の経営資源を有効活用できる可能性を示す。さらに、カウンターパーティ・リスクの規制資本において、内部モデルに基づく資本コストをアメリカン・モンテカルロ法で数値計算する手法を提示する。規制資本の内部モデルは、標準的方式と比較して担保を踏まえたリスク・プロファイルを適切に反映できる。計算結果から、証拠金規制の導入に伴い、内部モデルが、資本コストの観点で以前にも増して有効になることを明らかにする。

キーワード:XVA、CVA、証拠金規制、SIMM、KVA、IMM、アメリカン・モンテカルロ法


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