金融研究 第35巻第2号 (2016年4月発行)

市場リスク計測における保有期間調整について

前田寿満

本稿では、金融機関でのリスク計測における問題点の1つである短期間の市場変動から長期間の市場変動への調整方法(保有期間調整)に注目して分析を行う。保有期間調整の代表的な手法としてルートt倍法やムービング・ウィンドウ法が挙げられるが、どちらの手法も本質的な問題が解決されないまま金融機関のリスク管理実務に利用されている。ルートt倍法については、先行研究で提案された各手法の修正案を取り上げ、本邦の大手金融機関のエクスポージャーに即して有効性の検証を行う。また、リスクを合算する際の保有期間調整についても取り上げ、相関係数に対する保有期間調整方法を提案し、その有効性を検証する。ムービング・ウィンドウ法については、実際の市場データの特性を考慮した場合の影響について分析する。本稿の分析を通じて、保有期間調整において各手法がもつモデル・リスクの大きさを明らかにする。

キーワード:リスク管理、市場リスク、リスク合算、保有期間調整、ルートt倍法、ムービング・ウィンドウ法


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