金融研究 第27巻別冊第2号 (2008年11月発行)

メイン寄せリスクと貸出債権価値の評価:ゲーム論的リアルオプションによるアプローチ

芝田隆志、山田哲也

 企業の信用力が低下した際に、貸出を回収する銀行に代わってメインバンクが追加貸出を行うことがある。こうしたメインバンクへのエクスポージャー集中は、一般にメイン寄せと呼ばれている。本稿では、企業の業況が悪化していく際に、2つの銀行が貸出の早期回収を巡って競争する状況を考え、メインバンクが肩代わり貸出を行う合理性がゲームの均衡として表現できること、回収・清算の最適タイミングや、メイン寄せリスクを考慮したうえでの貸出債権価値評価が導出できることを示す。モデルの比較静学より、i)企業の清算価値が低いほどメイン寄せが生じやすくなるとともに、いったんメイン寄せされた後は、清算を先送りする合理性が強まってしまうこと、ii)貸出金利スプレッドが低いと、メイン寄せの発生を通じて貸出ポートフォリオの集中リスクが高まる可能性があること、特に、企業の信用状況が悪化したときほど信用リスクは加速度的に上昇することが確認された。

キーワード:メイン寄せ、リアルオプション、ゲーム理論、貸出債権価値、集中リスク


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