金融研究 第27巻第4号 (2008年12月発行)

適応的学習と金融政策

武藤一郎

 本稿は、近年発展を遂げている「適応的学習(adaptive learning)」を導入した金融政策分析に関するサーベイを行ったものである。適応的学習とは、合理的期待の仮定の1つである「人々が経済の変動法則(law of motion)に関して完全な知識を持つ」という仮説を見直し、「人々は現在および過去の実際の経済の動きを観察することによって、経済の変動法則に関する知識を経験的に習得している」と捉え直したものである。適応的学習を導入した金融政策分析では、金融政策ルールがどのような条件を満たせば、人々の期待を合理的期待に収束させられるのか、適応的学習下の最適な金融政策はどのようなものかといった点について理論的な分析が進められてきた。また、近年では、適応的学習を流動性の罠や中央銀行の透明性などの分析に導入した応用研究や、適応的学習を導入したモデルの実証研究も行われるようになっている。本稿では、これらの研究で得られた主要な結果について紹介する。

キーワード:適応的学習、E-stability、合理的期待、金融政策ルール


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