本稿では、期待ショートフォールの実務への応用可能性を探るため、(1)その推計値の安定性、(2)それに対するリスク・ファクターの寄与度の算出、(3)それに基づくポートフォリオの最適化の3点を検討した。この結果、期待ショートフォールは、各リスク・ファクターの寄与度の算出やポートフォリオの最適化が容易な点でバリュー・アット・リスクよりも優れていることが判明した。また、デフォルト相関の高い与信ポートフォリオなど損失額分布の裾が厚い場合は、期待ショートフォールの推計値はバリュー・アット・リスクの推計値に比べ不安定化するので、期待ショートフォールの推計には、バリュー・アット・リスクの推計に比べ多くのシミュレーション回数を確保する必要があるとの結論が得られた。
キーワード:期待ショートフォール、バリュー・アット・リスク、最適化
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