ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2025-J-8

貿易取引の為替リスクヘッジにおけるディープ・ヘッジングの活用

三輪幸哉

本稿では、企業の為替リスク管理における新たなアプローチとして、機械学習の活用を提案する。具体的には、企業の外貨建て貿易取引に関して、機械学習をヘッジに応用した技術である「ディープ・ヘッジング」を活用することで、実務上重要な取引コストや内外金利差を考慮したヘッジ戦略の構築を試みる。そのうえで、提案手法によるヘッジ戦略の特性を考察する。その結果、以下の3つの特性を明らかにする。第1に、簡便な金融市場を想定した2項モデルを検証モデルとして用いて提案手法のパフォーマンスを確認すると、提案手法から導出された戦略は検証モデルの理論的な最適戦略と一致する。第2に、提案手法は既存手法と比べて、特に取引コストが高い環境下において、下方リスクを抑制しつつ期待収益向上を実現するという点で優れたヘッジ効果が得られる。これは、提案手法が取引コストに応じた最適戦略を構築できることを示している。第3に、提案手法は、下方リスク抑制と期待収益向上のどちらをより重視するかといった、企業固有のリスク選好をヘッジ戦略に反映することができる。

キーワード:ディープ・ヘッジング、為替リスク管理、機械学習、動的ヘッジ戦略


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