ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2023-J-6

深層学習によるファイナンスの新展開-ディープ・ヘッジングとディープ・キャリブレーション-

篠崎裕司

機械学習のファイナンス分野への応用が活発に議論されている。その中でも、深層学習は、金融工学・数理ファイナンスで中心的な役割を担うヘッジおよびキャリブレーションの技術を大きく発展させることが期待されており、実務家と研究者の双方から注目を集めている。深層学習をヘッジに応用した技術である「ディープ・ヘッジング」は、これまで定量化が困難だった取引コストなどの影響を分析可能としうるものであり、デリバティブのヘッジの精緻化・自動化のほか、広範なリスク管理への応用も展望される。一方、「ディープ・キャリブレーション」は、デリバティブの時価評価やリスク管理の過程で必要となるパラメータの最適化計算を、深層学習を活用することで高速化・安定化させることが期待されている。本論文では、実務面と学術面双方の視点を意識しつつ、既存研究の概要と今後の方向性を整理する。とくに、既存のファイナンス論の理論的枠組みや実務における問題意識との関係を明確にしつつ、深層学習が今後もたらしうるファイナンス分野の発展可能性および実務上の留意点について議論する。

キーワード:金融工学、数理ファイナンス、デリバティブ(金融派生商品)、ヘッジ、キャリブレーション、数値的最適化


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