ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2023-J-4

明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート:データの整理とその変遷

小池良司

本稿は、明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート(日銀BS)の変動を概観している。その特長は、(1)主要項目別の動きを時代ごとの背景要因と照らし合わせながら、名目値と対GNP比の両面から検証したこと、(2)年次計数を用いた先行研究に対し、半期値や月次値を各種の歴史資料から作成し、より高い精度で再検証を試みたことの2点である。分析の結果、日銀の総資産は平時には対名目GNP比10~15%水準で推移していたが戦争時には19~48%に上昇していたこと、各種の金融危機では最大16%水準の上昇に止まっており戦争時の高さが際立っていること、銀行券は日銀草創期と太平洋戦争期を除けば8~11%で安定推移していることなどが確認された。また、月次値は、金融恐慌や関東大震災、金解禁や新円切り替えなど金融経済制度の急変時における短期的な変化を詳細に捉えており、外生ショックやイベントの影響を識別するといった各種の歴史研究に有用な情報を提供するものであることが確認された。

キーワード:明治期から戦後復興期、日本銀行バランスシート、歴史資料、半期値、月次値


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