本稿では、動学的ネルソン=シーゲル・モデルを使って、わが国の低金利環境におけるイールドカーブ変動を計測し、金融緩和効果を的確に捕捉するための指標構築を試みる。実証結果を踏まえると、超低金利環境でのイールドカーブ変動を捕捉するためには、水準、傾き、曲率というイールドカーブの変動要因に加えて、長期水準への収束速度をコントロールするローディングパラメータも時変化することが有効である。また、金融政策指標の推計結果は、イールドカーブが極端に低下した金融環境のもとであっても、非伝統的金融政策によって、超長期ゾーンを中心としたイールドカーブの押し下げにより金融緩和効果が引き出されていることを示している。ただし、マイナス金利政策の導入以降についてみると、超長期ゾーンのイールドカーブ押し下げによる金融緩和効果の評価は、モデルの推計パラメータの微妙な識別に依存していることも確認される。
キーワード:イールドカーブ、動学的ネルソン=シーゲル・モデル、ローディングパラメータ、非伝統的金融政策
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