ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2019-J-5

ビッグデータの法的保護に関する一考察

泉恒希

本稿では、ビッグデータを念頭に置いて、既存の著作権法により保護されないデータについて、知的財産法の観点から保護の要否を検討する。近年、情報技術の進歩を背景に、FinTechを支える基幹技術のひとつとしてビッグデータが注目を浴びている。こうしたなか、ビッグデータの財産法的位置づけの明確化は、今後拡大が予想される金融データの利用、ひいてはデータ産業全体に向けての法的基盤整備を進めるうえで、不可欠な検討課題といえる。一方で、ビッグデータに排他権を認めることは、かえって情報の円滑な流通を阻害するとの指摘もなされており、ビッグデータの財産法的位置づけを議論するに当たっては、データ生産者の投下資本回収という私的なインセンティブと、情報の円滑な流通という社会的便益との調和を意識する必要があろう。本稿では、日本、米国、EUを題材に、既存の著作権制度によるビッグデータ保護の可能性を検討したうえで、既存の著作権制度によって保護されない財産的価値のあるデータ(財産的データ)の法的保護のあり方について、近時の立法動向も踏まえつつ考察する。

キーワード:ビッグデータ、著作権、ミスアプロプリエーションの理論、sui generis権、不正競争防止法、データ・プロデューサー権


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2019 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム