ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2009-J-23

第一次大戦後の日本における国債流通市場の制度改革

永廣顕

 第一次大戦後の日本における国債流通市場の制度改革、具体的には株式取引所内における1920年の国債市場の開設と1925年の国債長期清算取引の開始について、それらの制度形成過程を解明することが本稿の課題である。第一次大戦中から戦後にかけての国債政策の推移を分析し、国債政策における国債流通市場の制度改革の位置づけを明確にするとともに、各政策主体の制度設計についての考え方の特徴を考察しながら問題を検討する。
 第一次大戦後の国債流通市場の制度改革は、第一次大戦中から戦後にかけての国債の発行、消化および償還政策の変化に対応した施策であった。国債の安定消化と過剰消費の抑制を目的として国債の民衆化政策が実施されたが、国債の民衆化を実現するためには国債の取引所取引を拡大して取引所市場の価格公示機能を高める国債流通市場の整備が必要であると認識された。国債流通市場の制度改革が展開する過程では、制度設計をめぐる論議の中心となった政策主体に変化がみられた。国債市場の開設については国債民衆化の実現のために大蔵省が主導したのに対し、国債長期清算取引の開始については国債市場開設時からの国債仲買人(国債取引員)の政策要求に大蔵省と日本銀行が対応した。制度設計についての考え方は、大蔵省と日本銀行で異同がみられた。

キーワード:国債市場の開設、国債長期清算取引の開始、国債の民衆化、国債流通市場、国債政策、政策主体、制度設計


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