情報技術研究センター情報技術研究グループでは、9月21日(木)、「量子コンピュータが暗号を解読する日はくるのか?~耐量子計算機暗号(PQC)への移行に向けた取組み~」とのテーマで、情報セキュリティ・セミナーを開催いたしました。
近年、量子コンピュータの実用化に向けた研究開発が国内外を問わず盛んに行われています。量子コンピュータは、従来型のコンピュータでは解くことが難しいとされる計算問題であっても短時間で解ける可能性をもつことから、金融資産等のリスク計算やポートフォリオ最適化などへの活用が期待されています。同時に、現在広く利用されている公開鍵暗号が安全性の根拠としている難しい計算問題についても短時間で解ける可能性があるため、大規模な量子コンピュータが実現すれば、現在主流の暗号技術が危殆化してしまう可能性があります。
とくに、最大の脅威と考えられているのがハーベスト攻撃です。ハーベスト攻撃とは、量子コンピュータが実用化されるまでの間に暗号処理されたデータを盗聴などにより収集しておき、量子コンピュータが実現したタイミングで一気にデータの解読を行うという攻撃手法です。
大規模な量子コンピュータが実現する時期は見通し難く、専門家による予想も区々となっているのが実情ですが、ひとたび実現すれば、その影響は甚大です。暗号技術の移行は数年以上の歳月を要するため、欧米主要国では、こうした攻撃への備えとして、量子コンピュータでも解読が困難な暗号アルゴリズム(PQC)への移行に向けた早期の検討が必要と考えられるようになっています。
本セミナーでは、こうした海外におけるPQCへの移行に向けた取組みや実装技術、金融分野において対応を検討する際の留意点や課題などについて、ご紹介しました。