金融研究 第27巻第1号 (2008年3月発行)

エクスポージャーの変動を考慮した信用リスク評価:コミットメント・ラインへの応用

藤原茂章

 サブプライム・ローン問題に端を発する世界的な金融市場の混乱や、コベナンツ(融資免責条項)を緩和した融資枠契約の増加により、流動性リスクや信用リスクが高まった証券化ビークル等に対し、金融機関が追加的な与信を求められる事例が発生している。これらはエクスポージャーの変動を考慮したリスク管理がいかに重要であるかを示す好例である。また、将来のエクスポージャー変動は、バーゼルIIの先進的内部格付アプローチにおいてもモデル内に織り込むことが求められている。本稿では、エクスポージャーが変動する与信形態として、コミットメント・ラインを取り上げ、企業価値変動と関連して新規借入需要が確率変動する信用リスクモデルを構築した。そのうえで、シミュレーションを通じて、デフォルト時エクスポージャー、デフォルト率、デフォルト時損失率、期待損失、非期待損失の相互依存関係について考察を行った。また、コベナンツの緩和の程度を簡便にモデル化し、その水準設定が期待損失などに及ぼす影響を検証した。

キーワード:コミットメント・ライン、デフォルト率、デフォルト時損失率、デフォルト時エクスポージャー、期待損失、非期待損失


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