金融研究 第25巻別冊2号 (2006年10月発行)

ARCH型モデルと"Realized Volatility"によるボラティリティ予測とバリュー・アット・リスク

渡部敏明、佐々木浩二

 本稿は、日次リターンにさまざまなARCH型モデルを当てはめた場合と、日中リターンから計算される"Realized Volatility"(以下、RVと呼ぶ)に長期記憶性と非対称性を考慮したARFIMAXモデルを当てはめた場合とで、ボラティリティ予測とバリュー・アット・リスク(VaR)のパフォーマンス比較を行ったものである。日経平均の日次リターンとRVを用いて分析を行った結果、RVを真のボラティリティの代理変数としたボラティリティ予測の比較では、RVをARFIMAXモデルによって定式化した場合が最もパフォーマンスが高いのに対して、VaRによる比較では、日次リターンをボラティリティ変動の長期記憶性と非対称性を考慮したFIEGARCHモデルによって定式化した場合が最もパフォーマンスが高いことが明らかになった。また、VaRでは、誤差項の分布に、正規分布だけでなく、裾の厚いt分布や分布に歪みのあるskewed-t分布を用いた分析も行っており、日経平均の日次リターンの分布には有意な歪みがないので、skewed-t分布を用いるとパフォーマンスが低下することが明らかになっている。

キーワード:ARFIMAX、FIEGARCH、Realized Volatility、バリュー・アット・リスク(VaR)、skewed-t


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