金融研究 第25巻別冊2号 (2006年10月発行)

金利派生商品の効率的な価格付け:
確率密度関数の近似を用いて

田中敬一、山田健、渡部敏明

 本稿では、確率変数の密度関数の展開(エッジワース展開、グラム・シャリエ展開および一般化エッジワース展開)を用いて、金利派生商品の価格を近似する手法を検討した。確率変数の密度関数の展開では、モーメントを求める必要があるが、このモーメントの値をできるだけ短時間かつ正確に求めることが、近似を行ううえで重要である。
 スワップションでは、スワップ価値が割引債価格の線形和で表現されることに着目した。金利の期間構造モデルの設定によっては、割引債価格の多項式、およびモーメントが解析的に求められるので、スワップション価格の近似式が得られた。また、CMSの評価では、コンベキシティ調整を必要とするが、それを割引債価格の多項式として近似を行うことで、CMSレートの近似式を得た。さらに、CMSレートの近似式に、密度関数の展開を組み合わせることで、CMSオプション価格の近似式を導出した。
 そのうえで、アフィン型期間構造モデルであるガウシアン・モデルとCIRモデルを用いた数値計算例で、スワップション価格、CMSレートおよびCMSオプション価格を求めた。その結果、本稿の手法は、短い計算時間で高い近似精度を示すことを確認した。

キーワード:エッジワース展開、グラム・シャリエ展開、一般化エッジワース展開、スワップション、CMS、CMSオプション


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