金融研究 第19巻別冊第2号  (2000年9月発行)

市場リスクの予測について
−EVTとGARCHモデルを用いた
バリュー・アット・リスク算定の比較分析−

ジョン・ダニエルソン、森本祐司

 本稿では、市場リスクの測定・管理、特にバリュー・アット・リスク(value at risk、VaR)のいくつかの計算手法について、日本の市場データを用いた比較分析を行う。特に、従来使われてきたGARCH(generalized autoregressive conditional heteroskedasticity)タイプの手法と極値理論(extreme value theory、EVT)による推定手法を比較する。比較の基準としては、VaRを超過するデータ(バイオレーション)の発生頻度、収益率分布の対称性仮定、バイオレーションの発生の仕方(独立に発生するのか、発生にムラ〈クラスタリング〉があるか)、VaRのボラティリティを基準として選択する。われわれの検証では、今回用いたデータに対しては、GARCHタイプの手法を用いて推定されたVaRは、推定精度の低さおよびボラティリティの高さという観点で問題を含んでいることが判明した。一方、EVTにより推定されたVaRは、推定精度が高い上に、推定結果が安定しており、日本市場のリスク予測指標として実務的な適用可能性の高さを示した。

キーワード:リスク、規制、極値理論、ボラティリティ、バリュー・アット・リスク


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