金融研究 第19巻別冊第1号  (2000年4月発行)

金融と保険の融合について

森本祐司

 本稿は、「金融と保険の融合」をキーワードとして、次の3つのトピックについてまとめたサーベイ研究である。

1. ART:実務面における融合の象徴的分野として、保険リスクの証券化などが挙げられる。こうした手法は一般にART(alternative risk transfer、代替的リスク移転)と呼ばれており、現在保険・金融双方で関心が高まっている。本稿では、ARTの定義、分類、商品概要、価格設定の考え方などをまとめる。
2. 保険数理と金融工学の融合:理論面、とくに価格理論において融合の萌芽が見え始めている。保険数理と金融工学がこれまでどのような発展経緯を辿り、昨今どのように関連を強めているかについて説明する。
3. EVT:リスク管理の高度化、金融リスクと保険リスクの統合管理に向けて、重要な役割を果たす可能性を期待されているEVT(extreme value theory、極値理論)について、基礎的な内容を解説した後、数値例等を示す。

 本稿は、上記の各項目ごとに、それぞれ一章ずつを割当てている。これらの内容は、広い意味で密接に関連し合っているものの、本稿ではそれぞれ独立した解説として扱っており、読者の興味・関心に応じて、必要な章に焦点をあてて読むことが可能である。

キーワード:ART、集合的危険論、保険料計算原理、無裁定と完備、EVT


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