本稿では、信用リスク・プライシング・モデルの一つであるロングスタッフとシュワルツのモデルを用いて、本邦の社債流通価格にインプライされている個別企業の期待デフォルト確率を推定する。
推定の結果、期待デフォルト確率は、①個別企業でなく格付ごとの平均的な水準をみると、格付が低いほど大きくなる傾向があり、格付機関の評価と市場の評価が概ね整合的であること、②同一格付内でもかなりばらつきがあり、格付という離散的な指標では捉え切れない連続的な信用度を市場の評価が織込んでいる可能性があることがわかった。
また、別のタイプの信用リスク・プライシング・モデルである改良型ジャロウ・ランド・ターンブル・モデル(家田[1999])での期待デフォルト確率の推定結果と比較し、各格付の平均的な期待デフォルト確率が両モデルとも同様の傾向があることを示す。さらに、両モデルの長所・短所にも触れ、分析目的に応じてモデルを選択する必要があること等を指摘する。
キーワード:信用リスク・プライシング・モデル、社債流通価格、格付、期待デフォルト確率
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