近年、理論的な発展が著しい信用リスクのプライシング・モデルを活用すれば、社債流通市場で観測される価格から期待デフォルト確率という具体的な数字を抽出することができる。本稿では、信用リスク・プライシング・モデルの一つとして、Kijima and Komoribayashi[1998]が示した"改良型ジャロウ・ランド・ターンブル・モデル"を採用して、本邦の社債流通価格にインプライされている格付ごとの期待デフォルト確率の推定を行った。
その結果、B格、CCC格のデフォルト確率が非常に高い水準にあることを確認した。この点に関しては、B格、CCC格のサンプルが少ないため断定的な結論を導くことは難しいが、これらの格付銘柄に対して市場が格付機関よりも一層厳しい評価を下している等の背景があると推測できる。また、株価情報から推定した期待デフォルト確率と比較すると、本稿のサンプルではBBB格以上では、概ね同様の傾向があることもわかった。
キーワード:信用リスク・プライシング・モデル、社債流通価格、格付、期待デフォルト確率
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。