本論文では、いわゆるMerton (1974) やBlack and Cox (1976) 型の構造モデルを用いて、金融機関の融資先が相互に商取引をしている場合の与信(融資金) の評価モデルを提示し、融資先企業の債権債務の依存構造が融資継続・回収方針や実行時点でのスプレッドに与える影響を考察する。数値分析によって、企業が持つ商取引債権は、(1) 資産の分散効果(正の影響)、(2) 同時倒産効果(負の影響)、の2 つの効果があり、それぞれの影響度を考慮して与信判断を行う必要があるという示唆が得られる。
キーワード:融資評価、構造モデル、相互取引、債権債務
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