ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2015-J-1

GDP成長率の将来予測における会計利益情報の有用性

中野 誠、吉永 裕登

ミクロレベル(個別企業)の利益数値に着目した実証的会計研究は、約50年もの間、世界中で実施されてきた一方で、「会計利益をマクロから考える」という研究スタイルは等閑視されてきた。しかし近年、マクロレベル(aggregate level)の会計利益をターゲットとした実証研究が、会計研究領域、および会計とファイナンスの複合領域において、台頭しつつある。
本稿は、ミクロレベル(個別企業)の会計情報を集約(aggregate)して作成したマクロレベルの会計利益情報の、国内総生産(GDP)成長率の将来予測における有用性について、わが国のデータを用いて実証的に分析するものである。第1分析では、集約利益率(aggregate earnings)と将来のGDP成長率との関係性を調査している。第2分析では、サンプル期間外推定を通じて、集約利益率を用いるモデルの予測パフォーマンスを確認している。2つの分析では、集約利益率の情報源を上場企業のみに限る場合(上場企業ベース)と、非上場企業も集計する法人企業統計に依拠する場合(法人企業統計ベース)とで結果に差異が生じるかどうかについても、着目する。
2つの分析の結果、わが国においても集約利益率はGDP成長率の将来予測に有用であることが確認されたとともに、上場企業ベースの集約利益率は、法人企業統計ベースの場合よりもやや劣るものの、それとほぼ同等の予測能力を有することが示唆された。上場企業ベースの会計情報は法人企業統計よりも速報性に勝るため、将来のGDP成長率予測に当たって上場企業の集約利益率を用いることには意義があるといえよう。
本稿はマクロレベルの利益率を用いたGDP成長率の将来予測に焦点を当てているが、マクロレベルの会計数値とマクロ経済指標との関係を解明することは、会計学研究に新しい地平線を切り開く可能性がある。マクロ経済分析と会計学研究が連携できる可能性を秘めているのである。

キーワード:GDP予測、集約利益


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