金融研究 第40巻第4号 (2021年10月発行)

スパース推定を用いた新しいヘドニック法について

王悠介、川上淳史、畑山優大、古田早穂子

物価指数の品質調整におけるヘドニック法の適用に当たっては、説明変数間の多重共線性や欠落変数によるバイアスなど、実務上の課題が存在する。本稿では、こうした課題を克服するため、「スパース推定(sparse estimation)」を用いた新しいヘドニック法を提案する。新手法は、多重共線性に対する頑健性を高める「グループ効果」、および変数選択の適正性と係数の漸近的な不偏性を同時に満たす「オラクル性」を担保することで、ヘドニック法の推計上の課題に対処している。新手法をわが国の乗用車の価格指数に適用した実証分析の結果、従来の標準的な推計手法と比べて、(1)回帰式に採用される変数の大幅な増加、(2)フィットの改善、(3)欠落変数バイアスによる品質向上率の過大評価の緩和といった点で改善がみられた。こうした結果は、品質調整におけるヘドニック法の利便性を高めるとともに、物価指数の精度向上に寄与するものと考えられる。

キーワード:物価指数、品質調整、ヘドニック法、多重共線性、欠落変数、スパース推定、アダプティブ・エラスティック・ネット


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