金融研究 第40巻第3号 (2021年7月発行)

新興国における外貨準備の蓄積の費用・便益について

松本英彦

本稿では、近年大きな関心を集めている新興国による外貨準備の蓄積に関する文献を展望する。初めに、外貨準備の蓄積が大きな関心を集めた理由として、2008年の世界金融危機の際に多くの国で外貨準備による介入が経済の安定化に貢献した事実と、アジアの新興国が従来適正とされた量をはるかに上回る量の外貨準備を蓄積している事実を紹介する。続いて、新興国が外貨準備の蓄積を進めた理由として指摘されている、将来の危機に対する予備的動機と、輸出主導の経済成長という動機について、主要な実証論文と理論モデルを紹介する。また、外貨準備の保有・蓄積に伴うコストについてもこれまでの研究を紹介する。最後に、外貨準備の適正な保有量を測る基準に関して、学界と国際通貨基金から提示されているいくつかの基準を紹介する。

キーワード:外貨準備、国際資本移動、通貨危機、経済成長、新興国、小国開放経済モデル


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2021 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム