金融研究 第39巻第3号 (2020年9月発行)

IFRSにおける収益認識に関する帰納的検討

秋葉賢一、羽根佳祐

国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board: IASB)の概念フレームワークは、首尾一貫した概念に基づいた国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards: IFRS)の開発を支援することを目的としているものの、収益(revenue)の認識に関する具体的な考え方は示されていない。そこで本稿では、収益認識に着目し、2018年改正の概念フレームワークを概観するとともに、近年公表された主要なIFRSを横断的に検討することにより、これらを包括するIFRSの考えを帰納的に考察した。結論としては、対象としたIFRSの収益認識においては、実現・対応という表現こそ用いられていないが、それらの考え方に沿った思考があり、むしろ肯定的であると考えられた。ただし、それは、伝統的に使われてきた狭義の実現ではなく、広義の実現の弾力性を制約するように「契約の履行」に焦点を当てて収益を認識するという考えである。また、対象としたIFRSは、資産性・負債性を重視しつつも契約から生ずる取引コストを規則的な方法で損益としたり、ストックの再評価を妨げないものの、その再評価による変動額を利益計算に反映させない工夫をしたりすることにより、フローの計上とともに、意味のあるストックの計上も重視している。そのような条件下において、IFRSの収益認識では、できるだけ費用との対応を考慮しており、そのような考え方が、2018年改正のIASB概念フレームワークにおけるマージン情報の有用性の記述にあらわれていると考えられる。

キーワード:収益認識、概念フレームワーク、国際財務報告基準(IFRS)、実現、対応


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