金融研究 第39巻第3号 (2020年9月発行)

中央銀行のコミュニケーションを巡るテキスト分析:政策的含意と今後の課題

風戸正行

金融政策運営におけるコミュニケーションの重要性が広く認識される中、近年の自然言語処理における技術進歩を背景にして、中央銀行(以下、中銀)のテキスト情報を用いた実証的な分析が国内外を問わず盛んに行われるようになっている。本稿は、こうした近年の中銀テキスト分析を、日本銀行に関するものを含めてサーベイしている。一連の実証分析結果を総合してみると、(1)中銀テキスト情報には金融市場に影響を及ぼしうる付加的な情報が含まれていること、(2)中銀テキスト情報に含まれる政策スタンスの変化等の追加的な情報は、金利や株価を整合的な方向に変化させていること、(3)中銀の付加的な情報が報道機関によって適切に抽出・報道されている可能性があることといった政策的含意が導き出された。さらに、本稿は、テキスト分析の中銀コミュニケーション研究に対する貢献について議論したうえで、今後求められる分析上の取組みとして、中銀テキスト情報に含まれる事前情報(既に金融市場に織り込まれている情報)を考慮していくこと、中銀テキスト情報の金融市場に与える影響の大きさや波及メカニズムを把握していくこと、および金融市場への影響の分析の中で、名目金利の実効下限制約を的確に考慮していくことを指摘している。

キーワード:中央銀行コミュニケーション、金融政策、テキスト分析


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