金融研究 第38巻第3号 (2019年7月発行)

銀行規制における会計情報の意義

二重作直毅、本馬朝子、山下裕司

本稿の目的は、銀行規制における会計情報の意義を議論することにある。具体的には、銀行規制において会計情報がどのように利用、調整されているのかを概観し、論点となり得る会計上の特性を整理する。また、既存の学術研究を概観することで、調整の意義を確認する。検討の結果、会計情報は銀行規制においていわゆる「契約支援機能」を果たしているものの、多くの調整が必要とされている事実が改めて確認された。また、調整の有無の背景を、その他の包括利益累計額、繰延税金資産、のれん、貸倒引当金、負債の公正価値変動を例に検証したところ、規制の目的上、必然的に調整が必要とされる会計項目の存在が確認された。加えて、会計情報の主観性、保守性、損益の実現(リスクからの解放)といった会計上の特性が、銀行規制における会計情報の意義を考えるうえで、特に重要な要素と整理された。なお、関連する先行研究は、現行の銀行規制の調整を肯定的に捉えるものがほとんどであったものの、一部項目については、留意すべき点があることを示唆していた。以上の発見事項等を基に、本稿の最後では、銀行規制および企業会計それぞれの観点から、幾つかのインプリケーションを考察している。

キーワード:資本、契約支援機能、銀行規制、損失吸収、主観性、保守性、実現


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