金融研究 第38巻第2号 (2019年4月発行)

1990年代における金融政策運営について:アーカイブ資料等からみた日本銀行の認識を中心に

伊藤正直、大貫摩里、森田泰子

本稿では、1990年代の金融経済情勢ならびに金融政策運営について、同時期に作成された資料を活用しつつ、当時の日本銀行からみた認識を整理した。
本稿作成作業を通じて確認できた点は次のとおりである。第1に、1990年代は、金融政策運営の考え方が透明性を重視する方向に変わっていった時期であった。これは、金融調節の指標が公定歩合操作から市場金利誘導へと移行し、市場との対話が一段と重要性を増したということが基本的な背景であるとみられるが、1998年4月に独立性と透明性を重視した改正日本銀行法(以下、新日銀法)が施行されたことも、透明性重視の流れを加速した。第2に、透明性重視という変化を背景に、1990年代後半(とくに新日銀法制定以降)は、公表資料が充実していった。このため、本稿で用いる資料も、とくに後半においては、公表資料中心となっている。第3に、1990年代は金融システムへの配慮が金融政策運営において重要な時期であった。このため、本稿では、不良債権の処理等を中心に金融システムの問題についても多くを記述することとなった。

キーワード:金融政策運営、不良債権処理、金融システム危機、新日銀法、ゼロ金利政策


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