金融研究 第37巻第4号 (2018年10月発行)

新たな事業形態の登場と法制度の対応について:ライドシェア・サービスに関する労働法上の論点を中心に

杉浦志織

近年、シェアリング・エコノミーと呼ばれる新たな事業形態が米欧を中心に急速に発展している。中でも、ライドシェアは、シェアリング・エコノミーの中核を占めており、市場規模が拡大している。米欧を中心としたライドシェア・サービスの営業を認める地域では、ライドシェア・サービスの普及により新たな雇用機会が生まれ、伝統的な雇用関係とは異なる柔軟な就業形態が可能となった。他方、こうした経済活動の変化により、労働法が対象としてきた労働者とそれ以外の者との境界が一層、曖昧なものとなっている。そこで、ドライバーが労働者と位置付けられるのか否かが、米欧で活発に議論されるようになっており、この点が争点となった裁判例も出はじめている。現時点において、わが国では、ライドシェア・サービスは本格的に導入されていないが、将来、こうした新たな形態のサービスが普及する過程では、米欧と同様に、労働者概念の再考を迫られる可能性がある。そこで、本稿では、日米の労働法制の違いを考慮しつつ、米国における議論を参考に、こうした新たな事業形態の登場に対し、法制度はどう対応すべきかを考察する。

キーワード:労働者、判断基準、使用従属性、指揮監督、シェアリング・エコノミー、ライドシェア、プラットフォーム


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