金融研究 第37巻第3号 (2018年7月発行)

証券決済制度と分散台帳技術

証券取引における分散台帳技術の利用を巡る法律問題研究会

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「証券取引における分散台帳技術の利用を巡る法律問題研究会」(メンバー〈50音順、敬称略〉:井上聡、加毛明、神作裕之、神田秀樹〈座長〉、小出篤、仁科秀隆、森田宏樹、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。
金融分野に大きな変革をもたらしうる技術として、分散台帳技術が注目されている。当該技術の金融分野のインフラへの利用に対する期待は高く、証券取引や資金取引の分野で、導入に向けた検討がなされている。
新しい証券決済制度のインフラとして同技術を利用することが経済的にも社会的にも合理的な要請となりうるかは未だ議論の最中ではあるが、そうした合理性が認められる場合には、同技術の利用が、現在わが国の証券決済を規整している「社債、株式等の振替に関する法律」のもとでの法的有効性を担保しうるかが次の課題となると予想される。そもそも、同技術の利用を検討していくに当たっては、現行法の規定を満たすようにその仕様を定めていくことが考えられるほか、現行法と同技術との間に親和性の低い部分があれば、同技術の利用に伴うベネフィットを享受するために現行法を修正する必要があると考えられる。
以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、現行の社債、株式等の振替に関する法律のもとで、分散台帳技術を利用することが可能かという観点からの検討を行い、仮に何らかの支障が生じる場合には、どのような現行法の修正が必要かについて検討を行っている。


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