金融研究 第36巻第3号 (2017年7月発行)

金融分野のTPPsとAPIのオープン化:セキュリティ上の留意点

中村啓佑

近年のモバイル端末の普及に伴い、情報技術を活用した従来にない金融サービス(FinTechと呼ばれる)が利用できるようになってきた。顧客のモバイル端末にインストールされた専用のアプリケーション・ソフトウェアを使って、顧客が取引する複数の金融機関からデータを取得し、それらを集計・加工して当該顧客に提供するサービス(口座情報サービス)はその一例である。こうしたサービスを提供する主体はTPPs(Third Party Providers)と呼ばれ、各国金融当局では金融機関のAPI(Application Programming Interface)のオープン化を念頭においた検討を進めているほか、一部の金融機関では、TPPsの取込みに向けて、自社のAPIを既にオープン化している。TPPsが介在すると、金融機関が保有する顧客の取引データに、TPPsもアクセスする。また、金融機関においては、APIのオープン化に伴い、新たな通信路を設けることになる。TPPsおよび金融機関は、新たなセキュリティ上のリスクを想定し、その対応策に関して検討する必要が生じる。本稿では、TPPsのサービスが実現される複数のシステム形態を概説し、金融機関のAPIのオープン化や、その標準化に関する最近の議論を解説する。そのうえで、APIを介してサービスを実施するシステムの基本的なモデルを想定し、そのリスクやセキュリティ対策について考察する。

キーワード:インターネット・バンキング、セキュリティ、モバイル端末、API、FinTech、TPPs


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