金融研究 第35巻第1号 (2016年1月発行)

GDP成長率の将来予測における会計利益情報の有用性

中野誠、吉永裕登

従来の実証的会計研究は、主に個別企業(企業レベル)の会計情報に焦点を当てるものであった。しかし近年、企業レベルの会計情報を集約した会計情報をターゲットとする研究領域が現れつつある。本稿では、この集約された利益情報(集約レベルの利益情報)のGDP 成長率の将来予測における有用性に関して分析している。第1分析では、集約レベルの利益情報と将来のGDP成長率との関係を分析している。第2分析では、サンプル期間外推定を通じて、集約レベルの利益情報を用いるモデルの予測パフォーマンスを評価している。これら2つの分析では、上場企業のみの利益情報を集約する場合(上場企業ベース)と、非上場企業も集約対象に含める法人企業統計調査を用いる場合(法人企業統計ベース)とで、結果に差異が生じるかどうかについても着目している。2つの分析の結果、わが国においても集約レベルの利益情報はGDP成長率の将来予測に有用であること、上場企業ベースは法人企業統計ベースとほぼ同等の予測能力を有することが示唆された。

キーワード:GDP予測、集約利益


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2016 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム