金融研究 第30巻第4号 (2011年10月発行)

前川講演:マクロ経済学におけるデフォルトの役割

チャールズ・A・E・グッドハート、ディミトリオス・P・トゥソモコス

 昨年の前川講演で、ウィリアム・R・ホワイトが現代マクロ経済理論の欠点を幾つか指摘したが、その中でも、最も主要な欠点の所在はどこにあると考えればよいのだろうか。われわれは、銀行のデフォルトを含め、デフォルトの可能性が分析の中枢に組み込まれていないことが、主要な欠陥であると考えている。デフォルトが存在しないと仮定すると、金融機関や金融市場の混乱、そして貨幣さえも、何の役割も果たさないことになってしまう。もっとも、デフォルトを組み入れたモデルを構築することは容易ではない。その理由の1つとして、例えば、代表的個人という仮想現実を捨て去らなければならないといったことが挙げられる。また、さらに、金融危機を予測したり、解決したりすることも、困難な作業である。システミックに重要な金融機関(SIFIs)の破綻処理に関して、既存の実行可能な選択肢は全て問題を含んでいる。SIFIsの破綻処理の改善に向けた現時点でのさまざまな提案を議論することで、本講演の結びとしたい。

キーワード:デフォルト、横断性条件、貨幣、倒産コスト、資産価格バブル、破綻処理メカニズム


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