金融研究 第30巻第2号 (2011年4月発行)

取引コストの削減を巡る市場参加者の取組み:アルゴリズム取引と代替市場の活用

杉原慶彦

 金融商品の売買執行に伴う取引コストへの理解が進み、精緻な測定が可能となってきたことで、近年、取引コストを技術的に抑制する実務面での取組みが発展している。本稿では、はじめに取引コストの構成要素等について整理したうえ、その削減手法としてアルゴリズム取引と代替市場がどう活用されているかサーベイする。アルゴリズム取引については、基本的な枠組み、投資家の活用動機、代表的な取引戦略、利用状況などについて整理する。また、近年アルゴリズム取引を活用しつつ発展している高頻度取引等についてもみていく。他方、代替市場については、注文付合せの形態、日米欧市場の特徴、代替市場で企図されている取引コスト削減効果などについてまとめる。こうした実務の取組みの進展は、マーケット・マイクロストラクチャーの変化を通じて価格形成に影響を与えうるほか、市場間競争や取引の仕組みの在り方に関する議論にも発展している。本稿では、最後に、アルゴリズム取引や代替市場を巡るこうした課題についても展望する。

キーワード:取引コスト、市場流動性、アルゴリズム取引、代替市場、執行戦略、高頻度取引、ダークプール


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