金融研究 第30巻第1号 (2011年1月発行)

行動ファイナンスの新展開:不確実性下における投資理論を中心として

山田哲也

 世界的な金融危機の発生を契機として、行動経済学や行動ファイナンスに対する関心が高まっている。こうした潮流を踏まえ、本稿では、行動ファイナンスと伝統的な投資理論あるいは金融工学との融合を目指した各種の研究をサーベイする。具体的には、バリュー・アット・リスク、オプション理論、ポートフォリオ選択、リアルオプションといった従来の理論に、プロスペクト理論や時間非整合割引率といった行動ファイナンスの理論が融合されてきていることを紹介する。これにより、近視眼的な投資が行われることや、損失拡大時に損切りを躊躇してしまうこと、また、価格の分布がファット・テールになることなど、伝統的なファイナンス理論の枠組みでは必ずしも十分な説明ができなかった事象が説明されることを示す。また、こうした研究のアプローチについての有用性および限界に関する議論を整理する。

キーワード:バリュー・アット・リスク、ポートフォリオ選択、リアルオプション、インプライド確率分布、プロスペクト理論、時間非整合割引率、投資家の群集行動


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2011 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム