金融研究 第29巻第2号 (2010年4月発行)

新日銀法10年間における情報発信に関する一考察

中島上智、服部正純

 1998年4月に施行された新日本銀行法(以下、新日銀法)では、日本銀行は自主性を持って金融政策を行い、金融政策運営の透明性を高めるように努力しなければならないことが明記されている。同法のもと、日本銀行は、金融政策運営の透明性向上を図るため、さまざまな情報発信の拡充に向けた取組みを行ってきた。本稿では、新日銀法施行後の10年間について、日本銀行によるさまざまな情報発信が市場金利のボラティリティに与えた影響を推計した。市場金利としてユーロ円3ヵ月金利先物の日次データを用いた推計からは、展望レポートや金融政策決定会合の議事要旨の公表は市場金利のボラティリティを低下させ、政策金利の変更や決定会合における採決反対者の増加はボラティリティを上昇させるとの結果が得られた。また、講演や記者会見による情報発信の影響は、そのタイプによって異なる推計結果が得られた。さらに、ゼロ金利政策、量的緩和政策のもとで、強いコミットメント効果が機能していた時期には、こうした情報発信による市場金利のボラティリティへの影響が顕著に低下していたことも確認された。これらの分析結果は、委員会制度やコミットメントのもとでの情報発信の影響を理解するために有用な結果と考えられる。

キーワード:中央銀行コミュニケーション、新日銀法、ボラティリティ、コミットメント、委員会制度


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