金融研究 第28巻第3号 (2009年10月発行)

生体認証システムの脆弱性の分析と生体検知技術の研究動向

鈴木雅貴、宇根正志

 身体的特徴等を利用して個人の認証を行う生体認証システムは、近年、金融分野をはじめとする幅広い分野において利用されつつある。生体認証システムを活用していく際には、生体認証特有の脆弱性としてどのようなものが知られているかを把握し、適切な対策を講じていくことが重要である。特に、生きている人間の身体部分でない物体を誤って受け入れてしまうという脆弱性が一部の市販のシステムにおいて存在する可能性が学会等において指摘されており、こうしたなりすましを目的とした攻撃法への対応が必要といわれている。
 本稿では、生体認証システムにおけるなりすましに焦点を当てて、最近の国際標準化の動向や学会における研究成果等を踏まえつつ、生体認証特有の脆弱性となりすましの方法との関係を改めて整理する。その結果として、既存文献で指摘されている以外のなりすまし方法をいくつか示し、それらへの網羅的な対策の講じ方について考察する。また、人工物を用いた攻撃への対策の1つである生体検知技術に焦点を当てて、研究動向や本技術を導入・利用する際に留意すべき評価項目について研究事例を基に考察し、生体検知の精度の比較を可能にするための検討が今後重要であることを説明する。

キーワード:生体認証システム、ISO/IEC19792、脆弱性、なりすまし、Liveness Detection、指紋


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