金融研究 第28巻第3号 (2009年10月発行)

インフレーション・ターゲティングの変貌:ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの経験

上田晃三

 本稿では、この約20年に亘る、ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの4ヵ国におけるインフレーション・ターゲティング(以下、IT)の変貌とその背景に関する事例の整理を実施した。分析を通じてわかったことは以下の3点である。1つめは、これら4ヵ国の中央銀行は、IT導入当初、インフレ期待の安定を重視する観点から、足許の物価安定に向けて厳格な運営を試みたが、その後徐々に中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営に変貌していったということである。2つめは、この変貌の背景には、経済に発生したショックの内容・大きさだけでなく、各国における政治的背景や、ITの枠組みに対する信認の強さもあったということである。3つめは、過去20年間に金融政策の透明性が大幅に向上・強化され、これが4中央銀行の政策運営に対する批判への防御となり、ITの枠組みに対する信認を確立・維持する助けとなっていたということである。

キーワード:中央銀行、金融政策、インフレ期待、透明性、資産価格


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