金融研究 第27巻法律特集号 (2008年12月発行)

担保の機能再論−新しい担保モデルを探る−

債権管理と担保管理を巡る法律問題研究会

 本稿は、「債権管理と担保管理を巡る法律問題研究会」(メンバー〈五十音順、敬称略〉:井上聡、内田貴、沖野眞已、神作裕之、神田秀樹、倉澤資成、小塚荘一郎、瀬下博之、早川吉尚、樋口範雄、前田庸〈座長〉、松下淳一、森田修、森田宏樹、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。
 担保法制の目的のひとつは、担保付与信を行う者に対してその経済的なニーズに応じた法的保護を与えることによって、担保付与信を望む債権者・債務者の両当事者にそのニーズに応じた与信取引を可能とすることにある。そのような意味で、担保法制のあり方は、産業金融法制のあり方を探るうえで重要な地位を占める。
 本報告書では、まず、担保の機能について分析・検討した。担保は、優先弁済確保機能のみならず、従来、あまり中心的に論じられることがなかった倒産隔離機能や管理機能を有していることを指摘したうえで、それらについて、優先弁済確保機能と独立した形で正面から論じた。今後、担保法制のあり方や担保にかかる銀行実務のあり方等を探求するにあたっては、こうした担保の持つ倒産隔離機能や管理機能につき留意されるべきものと考えられる。
 そのうえで、新しい担保モデルを模索する試みとして、担保の機能という視点を用いつつ、事業収益を構成する財産の担保化(将来債権や将来動産の譲渡担保)、企業担保制度、セキュリティ・トラスト等を題材として分析・検討を行った。とりわけ、「事業収益を構成する財産の担保化」─過度に不動産担保に依存してきたといわれている銀行担保実務を是正するひとつのアイディアとして注目されている「事業の収益性(キャッシュ・フロー)」に着目した新たな担保モデル─については、解釈論の整理を含めより詳細に論じている。


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