金融研究 第27巻第2号 (2008年4月発行)

ニューケインジアン・フィリップス曲線に関する実証研究の動向について

敦賀貴之、武藤一郎

 本稿では、いわゆる「ニューケインジアン・フィリップス曲線(NKPC )」に関する最近の実証研究の動向について解説するとともに、日本のデータを用いた実証結果についても報告する。欧米の実証研究を概観すると、Gali and Gertler[1999] 等、比較的初期の文献では、NKPC のフィットは良好であり、フォワード・ルッキングな要素が定量的に重要であるとされていたが、その後の研究では、NKPC のパフォーマンスは実際には必ずしも良好ではなく、バックワード・ルッキングな要素がインフレ率の決定要因として重要であると報告されている。この点、本稿では日本のデータを用いて分析を行ったが、日本についても欧米とほぼ同様の結果が得られた。最近の研究では、バックワード・ルッキングな要素が重要な意味をもつ可能性を検討した代表的なものとして、(1)インフレ期待の形成方法に着目した研究、(2)実質限界費用の計測方法に着目した研究の2 種類が挙げられる。本稿では、これらの研究動向についても概観する。

キーワード:ニューケインジアン・フィリップス曲線、インフレーション、実質限界費用


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