金融研究 第26巻第1号 (2007年2月発行)

公的金融機関の政策コストと行政コストの関係

岩本康志

 本稿では、近年充実してきた特殊法人の情報開示を政策評価に活用する観点から、政府補助の会計的費用を示す概念として公表されている政策コストと行政コストの活用方法について検討する。前者は後者の割引現在価値に相当するが、実際に計測・公表されている両者の数値はかならずしも正の相関関係にはない。そこで本稿では、両者の理論的関係を明示的に導き、政策コストの計算期間と融資残高で調整された変数が関係をもつことを示し、実際のデータでその関係が成立するかどうかを検証した。2000~04年度の公的金融機関のデータを用いた分析では、理論的関係と整合的な結果が得られた。このことから、政策コストと行政コストの適切な利用にはその理論的性質を正しく認識すべきこと、両者を適切に用いることによって公的金融機関の業務の性格を把握できることが示唆される。
 さらに本稿では、行政コストを用いて、公的金融機関への政府補助の大きさを比較することで、各機関の業務の性格を特徴づける分析を行った。公営企業金融公庫と国際協力銀行の国際金融勘定は傾向的に行政コストが負になっている。行政コストが正である機関では、国民生活金融公庫が低く、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が高い傾向にある。しかし、貸出金利には調達金利と営業経費が影響を与えており、財政補助の大小が直接、貸出金利の高低につながるわけではないことが示された。

キーワード:政策コスト、行政コスト、政策評価、公的金融機関、特殊法人、政策金融改革


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2007 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム