金融研究 第25巻第4号 (2006年12月発行)

ゼロ金利制約に関する誤解

ベネット・T・マッカラム

 本稿は、ゼロ金利制約に関する以下の5つの命題について再検討し、これらの命題はみな誤りであると主張する。(i)ゼロ金利制約下では、「将来の金利経路に関する期待に働きかけることが中央銀行の有する唯一の手段である」(Bernanke, et al.[2004])。(ii)理論的にいって、「ヘリコプター・ドロップ」のような財政政策のほうが金融政策よりも効果的である。(iii)有名な「流動性の罠を脱出する確実な方法(Foolproof way)」(Svensson[2001, 2003])の政策ルールのほうが、代替的な為替政策ルール(McCallum[2000])に比べアンカバーの金利平価が厳密に成立している場合でも適用できる分、一般性が高い。(iv)上記(iii)にあるような為替政策はともに「近隣窮乏化」政策であるとの反対を受ける余地がある。(v)「流動性の罠」型と異なり、「デフレの罠」型の均衡には、ゼロ金利制約に伴う重大な危険がある。

キーワード:利子率、ゼロ金利制約、量的緩和、期待、デフレの罠、流動性の罠


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