金融研究 第25巻第2号 (2006年8月発行)

条件付償還義務株式の会計処理について

板橋淳志

 本稿は、償還義務を有する株式のうち、償還義務の発生が株主の請求や不確実な事象の発生のように発行者のコントロール外の事象に依存するもの(条件付償還義務株式)を貸借対照表上、どのように表示すべきかについて検討するものである。具体的には、債務性をメルクマールとした現行の負債の定義に照らして、2つの会計処理方法を検討し、それぞれの課題を整理している。1つは、条件付債務に関する会計処理の基礎にある考え方に倣い、条件達成(償還)の可能性を貸借対照表に反映させる会計処理を適用する方法である。もう1つは、条件付償還義務株式を複合金融商品として捉える立場から、それを構成する基本的な金融商品に区分して会計処理する方法である。前者については、測定可能性の問題、資本からの控除方法、配当の損益計算書における表示等、いくつか解決すべき課題を取り上げている。後者においては、区分される償還義務要素の測定可能性、要素間の不可分性を測定に反映させる方法および区分処理が妥当とされる場合の判断規準を課題として取り上げている。

キーワード:偶発事象、条件付債務、償還株式、優先株式、負債と資本の区分、複合金融商品


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